4.能楽 「 高砂 」 と 詩吟 「 川中島 」


  ★  能楽 「 高砂 」


  年を取るに従って、何故か歌ってみたくなる歌はありませんか?例えば結婚式でもお馴染みの「 高砂 」。
  母音・言霊を意識して歌えば・・・何か良いことが起きるかも!?


  歌詞

  高砂や この浦舟に 帆を上げて (この浦舟に 帆を上げて)
  月もろともに 出潮の 波の淡路の 島影や
  遠く鳴尾の沖過ぎて はやすみのえに 着きにけり (はやすみのえに 着きにけり)


  解説 (ウィキペディアより)

  (結婚式ではカッコ内は繰り返さず、「出潮⇒入潮」「遠く鳴尾⇒近く鳴尾」と変えて謡う場合が多い)

  物語

  九州阿蘇宮の神官(ワキ)が播磨の国、高砂の浦にやってきた。春風駘蕩とする浦には松が美しい。
  遠く鐘の音も聞こえる。そこに老夫婦(シテとツレ)が来て、木陰を掃き清める。

  老人は古今和歌集の仮名序を引用して、高砂の松と住吉の松とは相生の松、
  離れていても夫婦であるとの伝説を説き、松の永遠、夫婦相老(相生にかけている)の仲睦まじさを述べる。
  命あるものは全て、いや自然の全ては和歌の道に心を寄せるという。

  ここで老夫婦は自分達は高砂・住吉の松の精である事を打ち明け、小舟に乗り追風をはらんで消えて行く。
  神官もまた満潮に乗って舟を出し(ここで『高砂や…』となる)、松の精を追って住吉に辿り着く。
  「われ見ても 久しくなりぬ住吉の、岸の姫松いく代経ぬらん」 (伊勢物語)
  の歌に返して、なんと住吉明神の御本体が影向(ようごう)され、美しい月光の下、颯爽と神舞を舞う。

  「 高砂 」 お手本           「 高砂 」 お稽古  




  ★  詩吟 「 川中島 」


  次は、子供の頃に父親がよく歌っていた「川中島」ですが、「弁慶 しくしく」と聞こえるのです。
  義経と弁慶が追っ手を逃れて、夜の内に川を渡って、泣きながら逃げる場面だとばかり思っていました。
  年を取るに従って、父親の事が懐かしく感じるのか、お酒を飲まなくても何故か歌ってみたくなるのです。

  ふと思ったのですが、父親にしても子供の頃から歌っていたとは考えられません。
  やはり・・・
  私が父を思うのと同じように、祖父が歌っていたのを思い出しながら歌っていたに違いありません。
  親子で喧嘩した時の事や、親不孝であったことなどを反省しながら・・・
  父親の辛さを理解できるようになるには、相当な時間がかかるようです。

  それは、「うちの亭主は出世しない」「給料が安い」など、うっかりすると「母親の立場」「女性の論理」に
  納得してしまうからです。
  では、逆の立場になって、母親が社会に出て仕事をしたら、高給取りになって出世するのでしょうか?
  どちらも同じなのです。相手の立場を理解していからなののです。



  「川中島」  ョ 山陽(らいさんよう)

  「不識庵(上杉謙信) 機山(武田信玄)(ふしきあんきざん)を撃つの図に題す」

  鞭聲 肅肅  夜河を 過る
  曉に見る 千兵の  大牙を 擁するを
  遺恨 十年  一劍を 磨き
  流星 光底  長蛇を 逸す



  べんせいしゅくしゅく よるかわをわたる
  あかつきにみる せんぺいの たいがをようするを
  いこん(なり) じゅうねん いっけんをみがき
  りゅうせいこうてい ちょうだをいっす



  詩吟 「 川中島 」  


  【頼 山陽】 1780 〜 1832

  江戸時代後期の代表的な儒学者であり、又詩人として多くの詩を残している。
  その中でも特に有名で最も愛吟されているにはこの詩である。
  謙信と信玄との歴史に残る川中島での戦いを、迫力あふれ、リアルに歌い上げた名作である。

  【語 釈】

  不識庵=上杉謙信。 機山=武田信玄 いずれも法号。
  鞭声=馬に当てるむちの音。 粛々=静かなさま。
  暁に見る=夜明に見る。武田軍が夜明けに見た上杉軍。
  「日本外史」に、“暁未だ人色を弁ぜざるに、謙信の牙旗に前に在るを見、将士皆色を失う”とある。
  大牙=大将の旗。 擁=抱く、守る。ここでは、掲げる意。
    流星光底=打ち下ろす刀光一閃のもと。流星**大刀のきらめくすさまじいさま。(中国の宝剣の名)
  光底**斬り付けた刀光の直下。 長蛇=大蛇だいじゃ、大物

  【通 釈】

  上杉軍は夜陰に乗じ、敵に気取られないよう、馬に当てる鞭の音も静かに犀川を渡った。
  武田軍の陣営では、霧が晴れ夜が明けてみると、なんと、そこで大将旗を擁した上杉謙信の大軍が迫って
  いるのを発見したのである。
  不意を衝かれ、大混乱に陥った武田軍に、この十年遺恨を晴らすべく、ただ一剣を研ぎ磨いてきた謙信は、
  すかさず刀光一閃、 信玄に切りつけたのである。信玄は太刀を抜く間もなく、軍配扇でただ防ぎに防いだ。
  信玄は駆けつけた救援により間一髪虎口を脱し、謙信は又しても宿敵“長蛇”信玄を討ち漏らしたのである。

  【参 考】

  “流星光底逸長蛇”は正に迫力ある名句であろう。
  この詩は 川中島の戦いで両雄一騎打ちの劇的な場面の絵に 頼 山陽が詩を付したものですが、
  吟詠ファンにとっては、剣舞には必ずと言ってよい程登場します。

  転載はこちらのサイト → 趣味の漢詩 「川中島」 ョ 山陽


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